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医療法人事業承継と認定医療法人制度

2018.06.18

平成29年10月1日から認定医療法人制度の一部改正が行われました。

従来ほとんどの医療法人が「持分の定めのある医療法人」として設立されてきました。

この「持分の定めのある医療法人」には、社員の出資額に応じた払戻し請求権があります。これは社員の退社時に出資持分の払戻し請求が認められており、払戻し金額は社員退社時点の時価純資産価額とされています。

医療法人は、安定した経営を行っていることが多く、剰余金の配当が禁止されているため利益が貯まりやすい体質です。長年医療法人を経営していると、上記の時価純資産価額が大きく膨らんでいる可能性も高くなっています。つまり、社員退職時に払戻し請求を行われると何億、何十億という金額を払い戻さないといけないかもしれないということです。これは払戻し後の医療法人運営にも大きく影響を及ぼします。払戻金額が大きいと医療法人の継続が不可能となってしまう恐れも出てきます。

もう一つ、「持分の定めのある医療法人」は持分の財産的価値があるため相続税の課税対象となります。医療法人は利益が貯まりやすいい体質ですから、大規模な医療法人の場合は数十億円の相続税課税評価額となることもあります。出資持分を相続した相続人は多額の相続税支払いに窮し、前述の払戻し請求権を行使するかもしれません。

これでは医療法人の事業承継が困難になってしまう可能性が高くなってしまいます。

そこで、2014年10月1日に認定医療法人制度がスタートし、出資持分を放棄してもらい「持分の定めのある医療法人」から「持分の定めのない医療法人」へ移行を促そうとしました。

しかし、「役員等のうち、親族・特殊の関係のある者は1/3以下であること」などの条件を満たさなければ出資持分放棄した金額分、医療法人に贈与税が課せられるために、この制度はあまり使われることがありませんでした。

そこで、2017年10月1日より改正認定医療法人制度がスタートしました。(2020年9月30日まで)(2020年10月1日~3年間延長されています)

これは認定医療法人となるための「運営に関する8項目の要件」が制定され、上記の「役員等のうち、親族・特殊の関係のあるものは1/3以下であること」などの条件が外されました。このことにより、同族であっても医療法人にみなし贈与税が課税されることなく出資持分を放棄しやすい制度となりました。

そして、医療法人事業承継を円滑にするための選択肢が広がりました。

ただし出資持分を放棄するということは、現在持っている財産権を放棄するということを念頭に置いて、医療法人事業承継対策を慎重に検討していく必要があると思います。

 

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