みなし相続財産について
2020.06.01
相続財産ではないけれど、相続税がかかる財産ってあるのでしょうか?
正解は、「ある」です!
それが「みなし相続財産」なのです。
みなし相続財産とは
みなし相続財産とは、民法上は相続財産ではないのですが、税法上は相続財産としてみなして相続税を課税する財産のことです。
みなし相続財産の代表的なものは、生命保険金と死亡退職金です。
生命保険金や死亡退職金は、民法上は受け取った人の固有の財産で受け取った人が元々持っていたものという解釈になりますが、税法上は受け取った人が元々持っていたわけではなく被相続人が亡くなったことで受け取った人のものになったという解釈により相続財産とみなして相続税が課税されます。
みなし相続財産の種類
①生命保険金
契約者=被相続人、被保険者=被相続人、生命保険金受取人=相続人
の契約形態で受け取った生命保険金。
②死亡退職金
・死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡が3年以内に確定したもの
・生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
③生命保険契約に関する権利
生命保険は、保険対象の人(被保険者)と保険料負担をする人が異なる場合があります。例えば子が保険対象(被保険者)で保険料負担者が父であった場合に、父が死亡しても子(被保険者)は生存していますので契約は継続されます。その生命保険の権利が相続財産としてみなされ、相続税が課税されます。
なお、生命保険契約に関する権利の相続税評価額は、保険料負担者死亡時の「解約返戻金」の金額です。
④定期金に関する権利
定期金とは個人年金保険などの定期的に支給されるものを指します。例えば、父が10年確定年金の受け取りをしていたが、5年だけ受け取って他界してしまった場合、残る5年分の年金受給権がみなし相続財産として相続税課税の対象となります。
また、年金受給権を持った人が、まだ年金受取が開始していない時点で他界しても課税の対象です。
みなし相続財産の非課税枠
1.生命保険金等の非課税枠
「500万円×法定相続人数」の金額を生命保険金等を差し引くことができます。
例えば、法定相続人が配偶者と子2人だった場合は、500万円×3人=1,500万円となります。
契約者=被相続人、被保険者=被相続人、生命保険金受取人=相続人の生命保険の金額が全部で3,000万円でしたら、
生命保険金3,000万円から非課税枠1,500万円を差し引いた金額1,500万円が相続税課税対象となります。
なお、生命保険等の金額が非課税枠以内の金額であった場合は、相続税課税がありません。
2.死亡退職金等の非課税枠
生命保険金等と同様に、「500万円×法定相続人数」の相続税非課税枠があります。
こちらも、死亡退職金の金額が非課税枠以内であれば、相続税が課税されません。
相続放棄とみなし相続財産
相続放棄をすると相続財産を受け取ることはできなくなります。しかし、生命保険金や死亡退職金の「みなし相続財産」は、民法上の解釈で受取人固有の財産ですので、相続放棄をしても受け取ることができます。
ただし、相続放棄をすると相続人とみなされなくなりますので、相続放棄をした人は、生命保険金等の非課税枠と死亡退職金等の非課税枠を受けることができなくなります。
例えば、法定相続人が子A、子B、子Cの3人で、子Cが相続放棄をしたとします。
みなし相続財産の非課税枠は「500万円×法定相続人数」ですが、相続放棄した人も法定相続人であることには変わりないので、
「500万円×3人」で計算して、1,500万円までが非課税枠となります。
相続放棄をした子Cは法定相続人には変わりないですが、相続人ではなくなりますので、子Cだけ非課税枠を使うことができなくなります。
まとめ
「みなし相続財産」は、受け取った人の固有の財産となりますので民法上は相続財産では有りません。しかし、被相続人の死亡により受け取ることができたということで、税法上は相続財産とみなして相続税の課税があります。
そして民法上、「みなし相続財産」は受取人固有の財産であり相続財産ではないため、遺産分割対象の財産ではなくなります。
(遺産種類の割合で、あまりにも生命保険金額の割合が大きい場合には遺産分割対象となることがあります)
つまり「みなし相続財産」は、民法上相続財産ではなく、税法上は相続財産であるという、2つの顔を持った財産なのです。
この性質を利用した揉めない遺産分割対策の方法があります。
この方法について詳しくお知りになりたい方は「遺産相続対策に有効な生命保険の正しい使い方」をご覧ください。
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