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不動産管理会社設立のメリットとデメリット

2020.06.06

家賃収入が入る収益物件を所有していると、不動産管理法人を設立した方がいいよというお話を聞くこともあるかと思います。

本当にそうなのでしょうか?

答えは、ケースバイケースです。

では、どんなケースでは有効で、どんな落とし穴があるのかについて説明していきます。

 

では、不動産管理法人にはどんなタイプがあるのでしょうか?

不動産管理法人には以下の3つのタイプがあります。

 

 

不動産管理法人の3つのタイプ

 

①不動産保有方式

②管理委託方式

③一括借上げ方式

 

①不動産保有方式

不動産保有方式は、不動産管理法人が直接不動産を所有する方法です。

賃料はすべて不動産管理法人が受け取り、そこからオーナーが役員報酬を給料として受け取ります。

この給料を受け取るというところで色々な節税メリットが生まれる可能性があります。

どんな節税メリットでしょうか。

 

・給与所得控除を使えるようになる

給与所得控除とは、給与所得者の給与から一定額差し引くことのできる控除額のことで、領収書無しで差し引ける経費のようなものです。

給与所得控除は給与額によって変わり、収入が多いほど控除率が下がります。

令和2年以降は以下の基準で計算します。(令和2年現在)

 

給与等の収入金額           給与所得控除額

(給与所得の源泉徴収票の支払い額)

180万円以下            収入金額×40%-10万円

                   (55万円に満たない場合は55万円)

180万円超360万円以下      収入金額×30%+8万円

360万円超660万円以下      収入金額×20%+44万円

660万円超850万円以下      収入金額×10%+110万円

850万円超             195万円(上限)

(国税庁ホームページより)

 

個人で収益物件の賃料を受け取ると、受け取った賃料から必要経費を差し引いた金額に対して課税が生じます。

法人で賃料を受け取った場合は、個人の場合と同様に必要経費を差し引くことができて、さらに給与所得控除を使えることになります。

これは実質的に、必要経費+給与所得控除を差し引けるということで、個人よりも税負担が軽くなると言えます。

 

・所得の分散ができる

個人で賃料を受け取っている場合は、所有者だけが賃料を受け取ることになります。

そして賃料収入から必要経費を差し引いた金額に所得税・住民税が課税されます。

ここで考えなければいけないのは、日本の所得税等は累進税率となっていて、収入金額が大きいほど税率が高くなるということです。

所得税率は以下の通りとなっています。

 

課税される所得金額       税率   控除額

195万円以下          5%    0円

195万円超330万円以下   10%  97,500円

330万円超695万円以下   20%  427,500円

695万円超900万円以下   23%  636,000円

900万円超1800万円以下  33%  1,536,000円

1800万円超4000万円以下 40%  2,796,000円

4000万円超         45%  4,796,000円

 

ということは、990万円を一人で受け取ると33%の所得税率となりますが、同じ990万円を3人で均等に分けて受け取ると1人330万円となり税率は20%になります。

そこで賃料を法人が受け取って、複数の人に給料として支払うようにするのです。これを「所得の分散」と呼びます。

 

例えば、個人で所有しているアパートがあり、年間2000万円の家賃収入と年間200万円の必要経費がかかるとします。

この場合は、2000万円の家賃収入から200万円の必要経費を差し引いて1800万円が所得税の課税対象となります。

1800万円の所得に対する所得税は、

1800万円×40%-279万6千円を計算して、約440万円となります。

 

では、アパートを法人所有にしたとしましょう。

家賃収入2000万円と必要経費200万円は変わりませんが、この他に自分と家族2人に給料を出したとします。

給料は一人年間360万円としてみましょう。

「法人の課税」

家賃収入2000万円ー必要経費200万円ー3人分の給与合計額1080万円=720万円となりこの金額が法人の課税所得となります。

720万円の法人税実効税率は約23%程度(自治体によって異なります)です。(資本金1億円以下)そうしますと、720万円×23%を計算して約166万円となります。

「個人の課税」

給与360万円に対しては給与所得控除が使えます。

360万円の給与所得控除額は、360万円×30%+8万円=116万円 です。

給与360万円ー給与所得控除額116万円=244万円 となりこの金額に個人の所得税課税となります。

244万円×10%-97,500円=146,500円の所得税となり、3人分合計で約44万円となります。

上記法人税と合計すると、約166万円+約44万円=約206万円 です。個人所有の場合の税額は約440万円でしたので、比べると効果は一目瞭然です。

法人にすると、経費扱いにできる種類も増えますので、税効果はさらにアップできる可能性があります。

 

では、元々アパートを所有していた場合に「不動産保有方式」の不動産管理法人にできるのでしょうか?

実は、これには高いハードルがあります。

収益物件のオーナーが法人を設立したからといって、所有不動産が設立された法人の所有になるわけではありません。

オーナーと新設立法人は別人格ですので、不動産を新設立法人に持たせたい場合は、オーナーが不動産を売却をしたり現物出資をしなければなりません。

では売却をする場合を考えてみましょう。

売却ですので、新設立法人はお金を出して買い取らなければなりません。

しかし、法人は誕生したばかりですのでお金を持っていません。多額の資本金を出資してもらうか、金融機関から借り入れるか、オーナーへ割賦支払いをする等を考えなければなりません。

ただ、法人設立を考えるような収益物件不動産は、それなりに高価なことが多くなります。1億円以上するものもざらにあります。そうしますと資本金として1億円以上の出資をすることになりますが現実的ではありません。

金融機関からの借り入れも、誕生したばかりの法人に貸し付けをすることには慎重になることが多いでしょう。

法人が不動産代金をオーナーへ割賦で支払うことはできるかもしれません。

もし法人への売却が可能になったとしてもオーナーへは多額の不動産譲渡税がかかる可能性が高くなります。色々な側面から考えてみる必要があります。

また、売却ではなく不動産を現物出資する方法もありますが、こちらも多額の譲渡所得税がかかる可能性がある等の問題がありますので、注意が必要です。また現物出資によって資本金の金額が大きくなると、法人住民税や軽減税率等の税制上のデメリットが出てきてしまいます。

 

②管理委託方式

管理委託方式は、不動産オーナーが不動産管理法人に対して、不動産から得られる賃料等の収入の一部を管理委託手数料として支払う方法です。

そして、不動産管理法人は、入ってきた管理委託手数料の中から不動産オーナーや家族へ給与を支払います。

管理委託手数料は、だいたい賃料の5%~10%程度と言われていますので、①不動産保有方式よりも効果は小さくなりますが、所得の分散効果や給与所得控除等のメリットを享受することができます。

ただし管理委託手数料は、税務調査で問題とされることがあるようです。特に同族では厳しく見られがちで、管理のノウハウがないにもかかわらず多額の管理委託手数料を取り節税していると指摘されるようです。管理委託手数料の設定には税理士等のアドバイスを受けることをお勧めします。

 

③一括借上げ方式

一括借り上げ方式は、オーナーが不動産を不動産管理法人に貸して、不動産管理法人がそれを又貸しする方法です。

不動産管理会社が一括借上げによってオーナーに支払う家賃は、家賃収入全体の85%が相場と言われていますが、こちらも税理士等のアドバイスを受けた方がいいでしょう。

 

 

まとめ

 

個人から法人にすることにより、経費計上できるものが増えます。

例えば、小規模企業共済の掛け金や中小企業倒産防止共済の掛け金、法人で加入した役員の生命保険保等の保険料が挙げられます。

また減価償却の自由度が増したり、繰越控除制度も個人事業主より優遇されています。

 

また、不動産管理法人を設立しますと、給与を支払うことができるようになります。

給与を支払うと、給与所得控除を使うことができます。

そして、家族を役員にすると、家族にも給与を支払えるために所得を分散することができ、低い税率を適用できる可能性が出てきます。

所得を分散すると、不動産オーナーだけの財産が増えてしまうことを抑えることができますので、相続対策としても有効です。

あと、相続対策を考えると、新法人の出資者は後継者であることが望ましいでしょう。

 

それなりの家賃収入がある不動産を所有されている方は、法人化を考える価値は大きいでしょう。

ただし、収益の金額等によっては法人化したことが経費倒れだったということもあり得ますので、不動産管理法人を設立を検討する際には専門家等のアドバイスが必要となります。

エヌ・コンコード・コンサルティング株式会社に是非ご相談ください。

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