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認知症になると相続対策をできません~認知症対策も考えましょう~

2020.09.13

長寿高齢化社会が到来してから久しくなりました。

2019年の日本人平均寿命は、女性が87.45歳、男性が81.41歳となっています。30年前である平成2年の平均寿命は、女性が81・9歳で男性が75.92歳です。30年で男女ともに平均寿命が約6年延びています。とてもおめでたいことですが、この現象はご周知のとおり手放しでは喜べないのです。高齢の方の増加と共に出生率も高ければいいのかもしれませんが、2019年の出生率は1.36です。単純に考えて2人の夫婦から2人以上の子供が生まれないと人間は減っていくわけです。出生率は昭和46年~48年の第2次ベビーブーム以降は下がり続けて常に出生率2以下となっていますので、日本人の人口減少が続いていくことになります。とりわけ若い人が少なくなっていくことになりますので全人口に対する高齢者数の比率が高まっていくことになります。2019年時点で総人口に対する65歳以上の人口割合は28.4%となっているのが現実です。

そして今回のお題であります認知症に目を向けてみますと、認知症患者数が2025年には700万人を突破するそうです。これは65歳以上の5人に1人が認知症患者ということになるのです。

では認知症とは何なんでしょうか?

 

認知症とは


認知症という言葉は病名ではなく、様々な病気により発生する特定の状態の総称なのだそうです。そして認知症が進行する最大の原因は加齢なのだそうです。

認知症の要因は様々あるようですが、主な症状として以下のことが挙げられます。

・脳細胞の変性がみられる

・時間や場所の認識ができない

・体験した記憶の全てを忘れる

・症状は進行していく

・忘れたことへの自覚が無い

 

こう見てみますと上記の症状がある人が何某かの契約をすることが困難であることがお分かりになるのではないでしょうか?契約したことすら忘れてしまうわけですので。

よって認知症がある程度進行した人は契約行為能力を失ってしまうことになるのです。

では認知症になった人が契約等をすることは不可能なのでしょうか?

実はいくつか方法はあります。

その一つが成年後見制度です。

 

成年後見制度


成年後見制度とは、判断能力が衰え不十分となってしまった成人を守るための制度で、後見人等が代理して契約等を締結したり財産を管理したりする制度です。この制度は、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがあります。

「任意後見制度」は、自らが元気なうちに将来判断能力が低下した場合に備えておく制度です。任意後見人を選び、任意後見契約を公正証書で結んでおきます。

「法定後見制度」は、既に判断能力が契約締結を出来ないほどに低下してしまった時に、申立により家庭裁判所によって後見人等が選定されます。判断能力の低下度合いによって「補助」「補佐」「後見」の3類型があります。判断能力低下度合いが重い順に「後見」→「補佐」→「補助」となり、それぞれ与えられる職務や権限が異なります。

 

後見人の問題点

この後見制度は一見使い勝手がよさそうですが、融通が利かない点もありますので注意が必要です。後見人の役目は被後見人の財産を守ることにあり、財産を運用したり組み替えたり処分することが役目ではありません。処分等をしようとする場合には家庭裁判所の許可が必要になります。よって、相続対策として不動産を売却しようとする場合にも後見人は家庭裁判所の許可を得る必要がありますが、処分に対しての許可はなかなか出ないことが多いようです。

このことから、相続対策の一環である認知症対策として後見制度を採用したとしても、結局は対策できなくなってしまう可能性が大きいのです。

実は、認知症になってしまった後に不動産の処分等をスムーズに行うことが可能な方法が別にあります。それは家族信託です。次は家族信託について見ていきましょう。

 

家族信託


家族信託の前に「所有権」について考えてみましょう。

「所有権」とは、物件を売ったり修繕したりする「管理権」と、物件に住んだり家賃収入や売却代金を得ることができる「受益権」の2つの権利をセットにしたものです。つまり、この「所有権」を持っている人が売却したり貸したりを決定して行うことができるのです。そして「所有権」を持っている配偶者や子供たちでも売却等を決定して行うことはできないのです。

既述のとおり所有権を持っている人が進行した認知症になってしまった場合には、売却や賃貸の契約をすることができなくなってしまいます。配偶者や子供たちも代わりに契約をすることができませんので、そのままでは何もできなくなってしまうわけです。

そこで成年後見制度があるわけですが、上記のとおりに売却行為等を認められない可能性が高く、何もできない状態と変わらないということになるかもしれません。

そこで今回の家族信託の出番になるわけですが、先ず家族信託とは何なのかをお話ししていきましょう。

 

信託契約とは、ある財産を信じた者に託し管理してもらう契約です。託す者が信託銀行や信託会社のような営利目的の業者であれば商事信託といい、業者でない者に託す契約を民事信託といいます。後者の民事信託の中でも、託される者が家族になりますと、それを家族信託と呼びます。商事信託では受託者に信託報酬が必要ですが、家族信託ですと受託者へ信託報酬を払ってもいいし払わなくてもいいのです。

信託契約では主に以下の3者が存在することになります。

〇委託者:財産の元々の所有者

〇受託者:財産の管理等を託された者

〇受益者:管理された財産からの果実を得られる者

つまり、「所有権」の中にある「管理権」を持つのが信託契約の中の受託者、「受益権」を持つのが受益者ということになります。

家族信託ということになりますと受託者が親族の誰かが請け負うことになります。受託者が信託契約をキッチリと履行するかはとても重要になってきますので、家族信託を検討する場合は信頼できる親族がいるかどうかが重要ポイントとなります。

では認知症対策として家族信託を使うにはどうしたらいいのかを具体例で見てみましょう。

 

家族構成:父・母・長男・次男

信託する財産:父親が所有している不動産(アパートの土地・建物)(家賃収入あり)

この状況で家族信託契約を作り上げていきます。

委託者はアパートを信託するになります。

受託者は事業を引き継ぐ予定の長男とします。

受益者とします。

そして父が認知症になった後も受託者の長男がアパートを管理していく契約内容にしていきます。他にも色々と細かく規定していく必要がありますが、ここでは割愛していきます。

こうした家族信託契約を作成していくことによって、将来父が認知症になったとしても不動産の管理をすることが可能になり売却等も選択していくことができるようになるのです。

また受益者である父が亡くなった後に第2受益者として母や長男を指定しておくことが信託契約では可能です。(受益者連続信託)

ただし、信託契約をしたとしても遺留分を侵害することはできませんので注意が必要です。今回の例ですと次男の遺留分を侵害しないかどうかを考えなければいけませんし、侵害している場合はケアする方法も付け加えていかないといけません。遺留分を侵害している内容の家族信託契約は無効になる可能性もあります。遺留分について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。→ 「遺留分について」

最後に、家族信託は比較的新しい制度であり、日本ではまだ事例も少なく専門家もそんなに多くはありません。しっかりとした専門家と一緒に信託契約を作り上げていくことが肝要でしょう。また成年後見等とのコスト等も比較検討する必要があります。

エヌ・コンコード・コンサルティング株式会社は家族信託にも真剣に取り組んでいます。

皆様からのご相談をお待ちしております。→ 「ご相談はこちらから」

 

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