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認定医療法人について

2018.07.02

厚生労働省は「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行を促すために、平成29年10月1日から令和2年9月30日まで新認定医療法人制度を実施していましたが、令和3年10月1日以降も3年間延長されています。(平成26年10月1日から平成29年9月30日までは最初の認定医療法人制度を実施していました)

なぜ認定医療法人が必要なのでしょうか?

以前の記事「医療法人事業承継と認定医療法人制度」https://n-concord.com/magazine/post-107/で記載しましたように、「持分あり医療法人」には医療法人出資者の財産権があり、出資持分の払戻請求権があったり、医療法人に貯まった利益が相続財産に反映されるというお話をしました。

つまり「持分あり医療法人」は多額の相続税がかかる可能性があり、多額の納税が必要な相続人から医療法人へ出資持分の払戻請求を受けるなどのリスクがあります。

そこで、「持分ありの医療法人」から財産権の無い「出資持分なし医療法人」へ移行すると上記の高額な相続税がかかったり、高額な出資持分払戻金を支払うというようなことは必要無くなります。これは、出資者が出資持分を放棄するということになります。

では、どのように移行するのでしょうか?

実は「出資持分なし医療法人」への移行は、制度的には定款を変更するだけで出来てしまいます。

しかし注意すべき点があります。それは出資者が出資持分を放棄するということにより、医療法人が出資持分払戻金を支払う必要がなくなり利益を得るということで、放棄された出資持分価値に対し医療法人に贈与税が課されることになっているのです。

贈与税を支払ってまで出資持分を放棄する方はなかなかいません。しかし放置しておきますと、出資持分を相続する段階で多額の相続税がかかり子供が医療法人を引き継ぎにくいという状態は継続されたままです。そこで厚生労働省は「新認定医療法人制度」という制度を創設したわけです。具体的には「新認定医療法人制度」を利用することにより上記の医療法人が支払う贈与税が免除されることになったわけです。(平成26年施行の最初の認定医療法人制度にも贈与税免除項目はありましたが、条件が厳しく利用されることはほとんどありませんでした。)

では「認定医療法人」とは何でしょうか?

「持分なし医療法人」への移行をすると決めた「持分あり医療法人」が、厚生労働省へ移行計画等を申請し認定された医療法人です。

認定医療法人となった「持分あり医療法人」は認定の日から3年以内に「持分なし医療法人」へ移行しなければなりません。そして移行後6年間は、毎年運営状況を厚生労働省へ報告する義務が生じます。

メリットは、

・出資持分放棄をしても医療法人への贈与税課税が無い。

・認定後から出資持分放棄までの間に相続や贈与があっても一定の条件の下納税猶予される。

・上記の納税猶予後に出資持分放棄すれば相続税、贈与税は課税されない。

デメリットとして、

・出資持分を放棄するということは私的財産が消滅することである。

・認定医療法人の条件下に医療法人運営活動が制限される。

・出資持分放棄したことを知った出資者家族からクレームがくるかもしれない。

といったところでしょうか。考えるとまだ出てくるかもしれません。

 

認定医療法人の運営に関する主な要件は以下の通りです。

①法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと

②役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること

③株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと

④遊休資産額は事業に係る費用の額を超えないこと

⑤法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽等の事実その他公益に反する事実がないこと

⑥社会保険診療報酬等(介護、助産、予防接種含む)に係る収入金額が全収入金額の80%を超えるこ と

⑦自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準によること

⑧医業収入が医業費用の150%いないであること

とあります。

節税だけを考えるのではなく相続や医療法人運営のことを総合的に考えて認定医療法人制度を活用するか否かを決定する必要があります。

弊社はこの方針決定のお手伝いをしてまいります。

 

 

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