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不動産の登記が義務化になります

2021.05.06

現在、所有者不明の土地となっている面積は約410万ヘクタールと推計されていて、これは九州の総面積よりも広くなっています。

所有者不明ということは、その土地を管理する人がいないということですので荒れ放題になってしまうことが多くなるでしょう。荒れ放題の土地は草木も生い茂ったままで周辺の住民にも迷惑が掛かるでしょうし、景観も悪くなっていきます。所有者がいないので売却等の処分もできせん。ましては、固定資産税を支払う人も不在となっているのです。

そこで国は所有者不明土地の対策を本格化させてきています。2021年4月21日の参院本会議では、所有者不明土地問題を解消するための関連法案が可決されました。この法案は2024年をめどに施行される予定ですが、改正内容を以下に記していきます。

 

 

改正民法 相続土地国庫帰属法


 

〇相続移転登記の義務化

相続があったことを知ってから3年以内に登記をすることが義務付けられます。今まで相続後に不動産の移転登記をする義務はなく罰則もありませんでしたが、今回の改正により登記は義務となり罰則も設けられることになります。罰則は10万円以下の過料となります。

また、登記手続き方法も簡素化されます。今までは、相続登記をする際に相続人全員の戸籍を集めなければならない等の面倒が多くありました。これを改正法では相続人の誰かが1人の申し出で簡単に手続する仕組みが設けられます。

相続移転登記を何代にも渡って行わなかったことが、所有者不明土地を増加させる大きな要因となっていました。しかし、この改正によって新たな所有者不明土地の発生を抑制することができるでしょう。

 

〇遺産分割協議に対しての期限に関して

今回の改正では、特別受益による贈与と寄与分について主張できる期限を10年としました。

(特別受益について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください→「遺産分割を考えるときに、特別受益を忘れてませんか?」

改正案の段階では遺産分割協議の期限を10年以内と定めることが検討されていましたが、可決された改正法では今まで通り期限なしとなります。

この部分の改正では10年以上の長期経過した後から特別受益や寄与分を主張されることはなくなりますが、影響は限定的ではないかと思われます。

 

〇所有者不明土地が裁判所の判断で処分が可能になる

放っておかれ荒れ果てた所有者不明土地を裁判所の許可を得て売却することができるようになります。この場合、売却代金は裁判所が管理することになります。

また共有状態の場合で一部の共有者が所在不明の場合にも、裁判所の判断で所在不明共有者を除外して宅地造成などが可能になります。この場合、所在不明共有者の持分については、相当する金銭を供託することにより取得・売却できるようになります。

この改正により、眠っていた土地が市場に出回りやすくなり、開発も促進される可能性が高まります。

 

〇土地所有権の国庫帰属制度の新設

相続人が要らないと判断した土地を国庫に納付できるようになります。納付できるかどうかの国の審査があり、更地である、抵当権が設定されていない、境界争いが無い、土壌汚染が無い等の条件を満たす必要があります。また、10年分の管理費を支払う必要があります。

今までも相続放棄をすることにより土地を手放す方法はありましたが、一部の不要な不動産を選ぶということはできませんでした。しかしこの制度によって要らない不動産をピックアップして手放すことが可能になります。相続放棄について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。→ 「相続放棄しても損しないの?」

 

 

まとめ


今までは相続移転登記が義務ではなかったために、費用がかかることや面倒であるといった理由で登記されないケースが散見されていました。そして所有者不明土地となる原因の約7割が相続登記未了だそうです。相続登記をしないままに何代分も相続が発生していた場合には所有者を判明させることだけで骨が折れる作業となります。今回の改正では登記が義務化され罰則も設けられますので、新たに発生する未登記事例は激減すると思われます。

また改正法では、所有者不明土地を裁判所の判断で処分が可能になり、相続人が不要と判断した土地は国庫へ帰属させることが可能になりますので選択肢が大きく広がることになります。そして休眠していたり休眠しそうな土地の流通が活性化することが見込まれます。権利関係が込み入っていて頓挫していた開発が再び復活する可能性も出てきます。

今回の民法改正は土地活用を促進させる効果が高いと期待できるものです。

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