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不動産共有問題のケーススタディ

2021.08.28

 

先日、不動産の共有についてご相談がありました。

今回は、このご相談を基に不動産を共有する問題点を考えていきます。

最初にご相談の内容からお伝えします。

相談者:A子さん

A子さんには夫のD男さんがいる。

A子さんとD男さん家族が住んるマンションは、D男さんの父C造さんとD男さんの兄B太郎の2人が所有者。

つまり、父C造さんと兄B太郎さんが所有しているマンションに、D男さんA子さん家族が住んでいるという状態です。

A子さんの相談内容は以下のとおりです。

「義父と義兄が所有しているマンションに住んでいる。このままずっと私たちが住み続けられるか不安だ。義父は自分が死んだ後、このマンションはD男に相続させるから安心しなさいと言ってくれている。義兄もそれでいいと言ってくれているのだが、本当に大丈夫なのかどうか不安。問題があれば教えてほしい。」とのことでした。

 

私はA子さんに以下の問題点を指摘しました。

・現状はC造さんとB太郎さん2人の共有マンションであること

・マンションの売却等を考える際には共有者全員の同意が必要であること

・C造さんが亡くなられた際にD男さんが相続できるのは、C造さんの共有持ち分だけであること

・C造さんの相続後も共有状態が続くこと

・B太郎さんの相続が発生した場合、B太郎さんの相続人が共有持ち分を相続すること

・口約束だけでは実際に何が起きるか分からないこと

沢山問題がありますね。

 

そこでA子さんに、いくつかの対策方法をお伝えしました。

〇共有状態を早めに解消すること

〇共有状態を解消するには登記を変更するだけでなく、売買か贈与を考えなければならないこと

〇マンションの相続だけでなく、C造さんの財産全部を把握して分割方法を考えなければならないこと

〇口約束だけでなく遺言作成を検討すること

〇遺言作成には遺留分を考慮する必要があること

※遺留分についてはこちらをご参照ください→ 「遺留分について」

A子さんは以上の私の提案を納得して聞いてくれました。

 

しかし、ここで今回の件の重要な要素が一つ浮かび上がってきます。それはA子さんは、このマンションの相続に関して相続人ではないということです。マンションの所有者とは姻族であっても相続する権利は無いのです。ということは、マンションの所有者であるC造さん、B太郎さんとA子さんの夫であるD男さんが相続対策に関わっていかなければ話しが進んでいきません。

法定相続人についてはこちらをご参照ください→  「相続人の範囲と法定相続分(国税庁)」

 

ここで、この時点でのC造さん、B太郎さん、D男さんの考えをまとめてみます。

C造さん: マンションも含めた財産全てをD男に相続させる

B太郎さん:父C造さんの考えに反対しない

D男さん:父も兄も、父の遺産は私が相続すればいいと言ってくれている。何も問題は無い。

といったものです。

こんな具合ですので、C造さん、B太郎さん、D男さんの3人は相続対策をする必要性を全く感じていないのです。しかしA子さんは、マンションに住み続けることができるのかどうかということに漠然と不安を感じて相談されたということなのです。

こうしてA子さんは私の話しを聞いて、漠然とした不安が顕在化した問題点へと変わったのでした。そして対策の必要性をC造さん達に訴えていき、説得したそうです。

さてA子さんの訴えかけに対して、どのような結果が出たのでしょうか?

出てきた結論は、共有状態は解消せずにC造さんが遺言を作成するというものでした。

遺言の内容は「C造さんが所有するマンションの持分はD男さんに相続させる」といったものだそうです。(私は遺言を見ていません)

では問題を解決できたのか考えてみましょう。

【解決できた点】

・遺言を作成したのでマンションの相続に関しては口約束でなくなった

【解決できていない点】

・マンション以外の遺産分割が考慮されていない

・共有状態は続くのでB太郎さんの相続後は共有持ち分がB太郎さんの相続人に引き継がれていくこと

・仮にC造さんの遺産を全てD男さんが相続した場合、遺留分の問題が残ること

といったところでしょうか。

 

共有状態を継続したからといって必ず問題が起きてしまうのかというと、そうではありません。

例えば、C造さんからD男さんに共有持ち分が相続された後に、D男さんとB太郎さんが共同でマンションを売却して売却代金を均等に分ける等のことも可能でしょう。

しかし、マンション売却した後のD男さんA子さんの住居をどうするのかを考えなければいけませんし、売却前にB太郎さんかD男さんに万が一のことがあった場合は相続人の売却同意を得なければいけません。マンションの共有持ち分が複数の相続人に相続されていた場合は、その複数の相続人全員の売却同意が必要です。B太郎さんとD男さんは仲が良く同意しやすかったとしても、その相続人同士が仲が良いかどうかは分かりません。つまり共有状態が長く放置されればされるほど不確定要素が大きくなってくるのです。

つまり、今回C造さん達が選択した対策方法は、口約束状態だけは解消したけども他のことは問題を先送りにした片手落ちの対策となってしまったのです。

以上見てきましたように、不動産の共有状態は時間が経過すればするほど問題が複雑化することがお分かりになったでしょう。そして相続の対策は一つのことを解決するだけでは問題が解決するわけではないこともお分かりになったことでしょう。口約束を解消するために遺言を作成したとしても、遺言内容が遺留分を考慮していないものであった場合には問題をさらに複雑かつ深刻化してしまうこともあるのです。(遺留分を考慮した遺言は最良の相続対策の一つです)

相続対策は一つの局面だけを見て小細工を施すようなことをするのではなく、全局面を見渡し、どのような事が起こり得るのかを想定して考える必要があります。不動産の共有問題だけを見ても色々な可能性が見えてくるのですから。

エヌ・コンコード・コンサルティング株式会社は、以上を重要視して相続対策を提案してまいります。初回のご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。ご相談はこちらから→ 「お問い合わせ」

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