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遺産分割で揉めて損したお話し

2021.11.24

 

相続税の控除制度


相続税を計算する際に、税額を少なくすることのできる制度がいくつも存在しています。

全ての相続に適用される「基礎控除」や、一定の条件下で使うことのできる「配偶者控除」「小規模宅地等の特例」「未成年者控除」「障害者控除」「相次相続控除」等が存在します。これらの制度の詳細についてはこちらをご覧ください。→ 「国税庁 相続税の計算と税額控除」

基礎控除の金額は、3,000万円+600万円×法定相続人数の公式を使い計算します。法定相続人が3人いた場合は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。基礎控除額は法定相続人数が多いほど増えることになります。養子も法定相続人となりますので、沢山の人と養子縁組をすれば基礎控除額も無限に増えるのかというと、そうではありません。何人でも養子縁組をすることは可能ですが、相続税の基礎控除を計算する際に養子は一人までしかカウントすることができない規則となっていますので注意しましょう。

さて納税者にとって有利になる控除制度ですが、しっかりと遺産分割をして申告しないと使えなかったり効果を消されてしまうことがあるのです。

今回はこの控除の恩恵を受け損なってしまった例をお話ししてまいります。

 

損した相続の一例


例)

「状況」

被相続人:母

相続人:長男(母と同居)、次男(結婚して自宅を購入済み) の二人

相続財産:自宅(土地6,000万円・建物1,000万円)7,000万円、現預金500万円

「基礎控除額」

3,000万円+600万円×2人=4,200万円

今回の相続では長男が被相続人の母と同居していましたので、長男が自宅を相続すると「小規模宅地等の特例」を使える公算が大きくなります。「小規模宅地等の特例」の詳細についてはこちらをご覧ください。→ 「国税庁 相続した事業の用や居住の用に宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

「小規模宅地等の特例」を使えた場合、土地の価額を最大で80%減額することができますので、6,000万円の土地を1,200万円で相続税計算できるようになります。

そうしますと、課税遺産額は、土地1,200万円+建物1,000万円+現預金500万円で、合計2,700万円となり基礎控除額より低くなりますので相続税が掛からないことになります。

この「小規模宅地等の特例」を使うためには、相続税の申告期限までに申告を済ませる必要があります。申告期限は相続発生から10ヶ月以内です。申告をするためには遺産分割協議を成立させている必要がありますので、長男と次男が期限内に署名・押印をしなければなりません。

さて今回の相続ではどのように分割されたのでしょうか?

最初の段階では、自宅は同居している長男が相続し、残る遺産の現金500万円は次男が相続するという方向で進んでいきました。しかし、ここで次男が異論を唱えることになりました。

次男の意見はこうです。

「全部で7,500万円の遺産のうち7,000万円も兄貴がもらうのかよ。納得いかない。そんな分け方じゃハンコを押すわけにいかないぞ」といった具合です。

さて困ったものです。次男がへそを曲げたまま申告期限の10ケ月を超えてしまうと「小規模宅地等の特例」が使えなくなってしまいます。そうしますと、課税遺産総額は7,500万円のままとなり基礎控除額の4,200万円を上回ることになります。つまり相続税を納税する必要が出てきてしまいます。

相続税をざっくりと計算してみましょう。

7,500万円ー4,200万円=3,300万円

となり3,300万円を相続人2人が法定相続分通りに分割したとしますと

3,300万円÷2人=1,650万円 です。

1,650万円の相続税は、

1,650万円×15%ー50万円=197.5万円です。

一人当たりの相続税が197.5万円ですので2人合わせると395万円です。

小規模宅地等の特例が使えていれば相続税が掛からなったケースですが、この特例が使えないと395万円の相続税が掛かってしまうのです!

さて結末はといいますと、「これは大変だ!」ということで長男が既に受け取っていた退職金5,000万円から代償金として3,000万円を支払うことにして遺産分割を成立させて小規模宅地等の特例を使おうとしました。

これで一件落着かと思いきや、次男が「代償金3,000万円では足りない。5,000万円貰わないと遺産分割協議書に押印しない」と言い出したのです。なんでも次男は高卒だが長男は理系の大学に行かしてもらい学費を多く貰っているとの言い分です。

長男は小規模宅地等の特例を使うために渋々次男の要求を受け入れることにしました。

しかしこの分割方法には落とし穴がありました。

今までお話ししてきた「小規模宅地等の特例」は対象土地を相続した相続人にしか適用されません。

今回のケースでは小規模宅地等の特例を使うことにより6,000万円の土地の課税価額を1,200万円で評価することができました。ゆえに、課税遺産総額が2,700万円となり相続が掛からなかったわけです。

しかし、代償金5,000万円を長男が次男に支払うことにより長男の相続分が、

7,000万円ー代償金5,000万円=2,000万円となります。

ここから小規模宅地等の特例減額分4,800万円を引きますと、長男の課税遺産額は0円となります。この点は代償金3,000万円のケースと変わりありません。

では次男を見てみましょう。次男は遺産である現金500万円と代償金5,000万円の合計5,500万円を相続したことになります。そして次男の分では小規模宅地等の特例適用がありません。5,500万円がそのまま課税遺産総額となります。

つまり長男分は0円ですが、次男分は5,500万円となりますので、2人合計の課税遺産総額は5,500万円となります。今ケースの基礎控除額は4,200万円を超える数字になってしまいました。つまり相続税が課税されることになるのです!

相続税計算は以下のようになります。

5,500万円ー4,200万円=1,300万円

1,300万円÷2人=650万円

650万円×10%=65万円

65万円×2人=130万円

となります。2人合計の相続税額が130万円となるのです。

なぜこのような事が生じてしまったのかと申しますと、代償金の金額が多大になったため長男の相続分が激減し小規模宅地等の特例で使える減額額を使いきれず次男の相続分が増加したことによってこのような結果が生じたのです。

(実際の相続税計算は専門の税理士にご相談ください)

相続の制度はいくつもの法律が絡み合い複雑です。専門家とタッグを組み隠れた事象も炙り出しながら結果を作り出していく必要があります。エヌ・コンコード・コンサルティング株式会社は最善の結果を生み出すお手伝いをしてまいります。

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