代償分割に生命保険を使う際の留意点
2018.07.05
遺産の中に不動産があったり、経営者の相続で自社株があったりした場合で、相続人が複数いる相続になると、等しく均等に遺産を分けることが困難となります。
以前にも述べましたように相続人には「遺留分」という権利があります。ここでは詳しく述べませんが「遺留分」までは相続人が欲しいといえば貰える権利です。この権利により相続人がいがみ合い、相続が争族に発展してしまうこともあります。
このことを防ぐために、生命保険金を代償分割交付金として活用する方法を以前にお話ししました。(「相続対策としての生命保険③」https://n-concord.com/magazine/post-78/参照)
今回はこの方法を使う際の留意点を一つお話いたします。
それは死亡保険金が代償分割の代償資金とならない場合があるということです。
以下の例でお話しします。
被相続人 母A
相続人 長男B 次男C
相続財産 生命保険金5,000万円(保険金受取人長男B)、現預金1,000万円
遺産分割 長男Bは生命保険金5,000万円、次男Cは現預金1,000万円
仲良く分割する目的で長男Bは次男Cへ生命保険金の中から2,000万円を代償金として支払う
上記のように仲良く分割しました。長男B、次男Cともに受取れた金額は3,000万円ずつです。
何の問題もないようですが、実は問題が出てくるのです。
このケースでは、次男Cに贈与税課税が発生してしまいます。次男Cは2,000万円貰ってますので贈与税額は695万円((2,000万円ー110万円)×50%-250万円)となってしまいます。
なぜこのような事になるのでしょうか?
生命保険金とは受取人固有の財産なので、今回のケースでの民法上の相続財産は現預金の1,000万円のみとなります。(生命保険金は、税法上みなし相続財産として相続税課税対象です)
ということは長男Bは自身固有の財産(生命保険金)を受け取っただけであり、相続財産の1,000万円は次男Cだけが受け取ったことになります。長男Bは何も財産を相続していないということになります。
この場合、長男Bは「本来の相続財産」を取得していないことから、取得した「本来の相続財産」の調整のための代償分割は起こらないとなります。よって長男Bが次男Cへ渡した2,000万円は贈与となってしまいます。
良かれと思って行った対策が水の泡となるどころか、対策をしないよりも悪い結果を生んでしまうこともあるのです。
このような結果を避けるために、相続対策は専門家と協力して法令、判例等をを確認しながら行うことが肝要です。
なお、税務の取扱等については平成29年4月現在の税制・関係法令等に基づき記載しており、今後税務の取扱等が変わる場合があります。また、個別の税務取扱については税理士や所轄の国税局・税務署等にご確認ください。