争続になりやすい相続
2024.04.30
相続でお困りになることはありませんか?とお聞きすると以下のお返事をいただくことが少なからずあります。
「うちは相続するような財産が無いので大丈夫ですよ」
もう一つ
「私がお金を使い切っちゃうので問題ありませんよ」
上段のご回答は、財産が無いのであれば一見ごもっともですが実は問題が山積みです。
2021年に裁判所に持ち込まれた遺産分割トラブルのうち遺産総額が1,000万円以下の事案が全体の約33%、遺産総額が1,000万円~5,000万円の事案が訳44%となっています。つまり遺産総額が5,000万円以下の事案で約8割を占めていることになり、相続財産が少ないほうがトラブルになりやすいことを示しています。
なぜでしょうか?
それは、分けるものが少ないほうが分けることが難しくなるということが言えるでしょう。さらに相続財産に自宅等の不動産が含まれていますと分割の困難度が増します。
ですので、「相続財産が無いから問題ない」という見解は的を外しているかもしれません。相続財産が完全にゼロであれば問題もゼロかもしれませんが、少しでも財産がプラスであったり、逆にマイナス(借入等)財産があっても問題になりえます。
次に、よくいただくご回答の「私がお金を使い切っちゃうので問題ありませんよ」についてです。こちらは本当に命が尽きる瞬間に財産を使い切るのであれば大変有効な手段でしょう。しかし、そんなことが本当に可能なのでしょうか?人の寿命がいつまでかをピッタリと知ることができれば可能でしょうが現代の医学ではまだ不可能です。また自宅等の不動産があると寿命と同時に財産を使い切ることはさらに困難となります。つまり、このアクロバティックな相続対策はほぼ不可能であると言えるでしょう。
以上のように、よくある相続対策へのご回答を検証してきましたが、これらの理由が問題を全く解決していないことがお分かりになると思います。この2つの理由で何も対策を考えなかったとしたら問題を先送りしているだけではなく相続人達の遺産分割トラブルが生じ争続に発展するリスクを残したままになります。
この他に相続が争続になってしまう要因として、偏った生前贈与、偏った介護負担、偏った遺産分割内容の遺言などがありますが、これらは相続人の不公平感がトラブルに発展させてしまいます。
私としては、争族とは問題を先送りにして何もアクションを起こさなかった結果の産物であると思っています。「自分が死んだ後のことは知ったことではない」というようなお言葉を聞くこともありますが、対策をすれば生じることのないトラブルであれば対策をするべきではないかと思います。深いご縁で家族となった人たちがずっと笑顔で繋がっていくほうが絶対に幸せですから。