M&Aにおける企業価値評価
2024.09.06
2023年の中小企業社長の平均年齢が60.5歳です。(帝国データバンク)
これは多くの中小企業で事業承継を行う、もしくは考えなければならない時期に来ているということが見えてきます。
中小企業の事業承継には親族や従業員に承継する身内への承継の他に、第3者に承継する方法も選択肢としてあります。
第3者承継を検討する場合はM&Aが選択しの一つとなりますが、この際には売値を決めるための企業価値評価が重要となります。
企業価値を評価する方法としまして主に3つございます。その3つの方法を以下に見てみましょう。
企業価値評価の手法
①コストアプローチ
対象企業の貸借対照表に記載されている項目(資産・負債・純資産)のうち、純資産に注目して価値を算出する評価方法です。コストアプローチには、「簿価純資産評価額法」という貸借対照表上の資産合計額から負債合計額を引いた純資産額を企業価値とみなす方法と、「時価純資産評価額法」という貸借対照表上の資産・負債額をじかに換算して算出する方法があります。
コストアプローチは、貸借対照表上の数字を基に算出するため比較的簡易に評価できるメリットがありますが、ブランド等の無形資産は評価に含められないというデメリットがあります。
②マーケットアプローチ
類似する取引事例、企業、事業と比較して相対的な価値を算出する方法です。マーケットアプローチには、「マルチプル法」という事業が類似する上場企業の株価を参考に算出する方法、「類似取引比較法」という類似するM&Aの取引事例を参考に算出する方法、「市場株価法」という過去数カ月の株価平均を参考に算出する方法があります。
マーケットアプローチは、市場の需要やトレンドを企業価値に反映させられるメリットがありますが、類似の上場会社が見つからない場合には評価できないというデメリットがあります。
③インカムアプローチ
対象企業から期待される利益やキャッシュフローに基づいて算出する方法です。インカムアプローチには、「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」という対象企業が将来獲得できると期待されるフリーキャッシュフローを使って算出する方法、「配当還元法」という対象企業の将来の配当額を使って企業価値を算出する方法、「収益還元法」という事業計画書に基づいて将来どれくらいの収益をあげられるかを計算し、資本還元率を利用した算出方法によって現在の収益に還元して割り出す方法があります。
インカムアプローチには、企業の将来性や成長性を踏まえて評価できるメリットがある一方、将来予測等は客観性に欠け評価に手間や時間がかかるというデメリットがあります。
以上見てきましたように企業価値を算出する方法は多岐に渡っていますが、各アプローチのデメリット等を考慮して、昨今は純資産価値を基準にするコストアプローチが広く持ち入れられるようになってきているそうです。またコストアプローチに時価純資産価額法や営業権を別途評価する等の方法を加えてデメリットを克服する工夫がなされているようです。