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中小企業の事業承継と新事業承継税制を考える

2018.08.20

今回は中小企業の事業承継を円滑にするための、新事業承継税制について考えていきます。

2017年の全国社長の平均年齢は61.45歳で、年齢分布で見ますと70歳代以上の構成比が21.68%となっており経営者の高齢化が顕著に表れてます。(東京商工リサーチデータより)

このことは、今後多くの企業が経営者の交代を行わなければならないことを示しています。経営者の交代には、事業の承継をどうするのかを考えていかなければなりません。

 

事業承継には何が必要でしょうか?

それは、「経営の承継」と「事業資産の承継」です。

 

「経営の承継」とは人の承継であり、後継者を誰にして、どの時期に承継するかを決定していく必要があります。

後継者と承継時期が決まっていれば、承継時期までに後継者へ必要な経験を積ませ育成し、情報等の承継を行い、さらに社内人間関係もに醸成させていくことが可能になってきます。

後継者が決まっていない場合、後継者を探し、それでもいない場合はM&Aや廃業を計画的に考えていく必要が生じるかもしれません。

 

「事業資産の承継」モノの承継であり、最大の課題が自社株の承継になることが多いのではないでしょうか。

これには先ず自社株の現状把握をすることが第一ステップです。自社株の評価額を計算するとともに、株主が誰かを把握していきます。

そして決定した後継者が将来もしっかりと経営権をグリップできるように、基本的には自社株が後継者に集中するようにしていきます。

自社株の直接的な承継方法として、相続、贈与、譲渡があります。(間接的な承継方法として、種類株式発行や持株会社の設立などがあります)

相続、贈与、譲渡のいずれの方法で自社株承継をするにしろ、自社株を時価評価して承継しなければなりません。長年順調に事業を運営し利益を蓄積させてきた企業の価値が思ったよりも高くなっていることが多々あります。300万円しか出資していないのに自社株の価値は何億円、何十億円になってしまうこともあります。そして、その価値に対して相続税、贈与税、譲渡税が課せられます。

中小企業の自社株は上場企業株と違い流通しませんので、基本的には買い手のいない流動性の非常に低い資産です。つまり現金化しづらい資産ですが、基本的に税金は現金払いです。現金を得ていないのに現金での納税が出来ず、そのために事業承継を断念しなければならない事態も生じてしまいます。

 

そこで、できるだけ事業承継をしやすくするために創設されたのが「事業承継税制」です。

これは、事業承継の際に先代経営者から後継者に自社株を贈与したり、後継者が自社株を相続した場合に、一定の条件の下に贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。

平成14年からスタートしたこの制度は、当初発行済株式等総数の1/3までしか猶予が認められていないなど条件が厳しくなっていました。平成21年には、発行済株式等総数の2/3まで認めるなど条件を少し緩くしました。また上記両制度ともに納税猶予後5年間は制度利用時の80%雇用確保が必要等の条件もありました。一部の株式にしか納税猶予を受けられないことや、80%の雇用確保ができなかった場合に猶予された納税額をすべて納税しなければならない等の理由で、この制度利用は進みませんでした。

こうしたことから、平成30年より事業承継税制の諸条件が大幅に緩和されました。

大きなポイントは以下の通りです。

・全ての議決権株式が対象

・自社株課税価格の100%が納税猶予

・5年間の雇用80%を維持できなかった場合の救済措置を設定

・先代経営者・以外のすべての個人株主に対象拡大

・60歳以上の経営者から20歳以上の推定相続人以外の後継者への贈与も対象となる

なお、この特例措置は2018年1月1日~2027年12月31日の10年の時限措置であり、適用を受けるために手続き必要です。

適用を受けるための手続き:認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた「特例承継計画」を作成しする。2018年4月1日~2023年3月31日の間に、都道府県に「特例承継計画」を提出し、知事の認定を受ける。

平成30年からの制度は、条件が大幅に緩和されていますので、大変使いやすくなっていると思われます。

次回はもう少し踏み込んで、この制度について考えていきます。

続く→「中小企業の事業承継と新事業承継制度を考える②」https://n-concord.com/magazine/post-286/

 

 

 

 

 

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