遺言について
2018.09.10
平成27年1月1日以降に発生した相続から相続税の基礎控除額が4割削減される等の基本的増税が適用されています。(基本的と記しましたのは減税になっている部分も少しあるからです)
それ以前の相続税基礎控除は、
5000万円+1000万円×法定相続人数でした。
↓
平成27年1月1日以降に発生した相続では、
3000万円+600万円×法定相続人数
となっています。
例えば法定相続人が、
配偶者と子2人 であった場合の相続税非課税枠は 以前は
5000万円+1000万円×3人=8000万円 でした。
↓
平成27年1月1日以降発生のの相続では、
3000万円+600万円×3人=4800万円 となります。
相続財産は自宅等の不動産も含めての価値を計算します。
非課税枠が8000万円あれば自宅を相続財産に含めても課税されない人は多いかもしれません。
しかし非課税枠が4800万円となると自宅・預貯金を合算して非課税枠を超えてくる人が増えますよね。
こうして相続税課税対象の人が増えることにより、相続対策の必要性が声高に叫ばれるようになりました。
こうした流れの中で、遺言を作成したり作成を検討される方が増えてきました。
遺言作成には賛否両論の意見があります。
遺産分割トラブルを防ぐ切り札になるという意見もあれば、遺産分割トラブルを生む要因になるという意見もあります。
筆者はトラブルを防ぐための有効なツールと考えています。
先ず、遺言が無いケースでは相続人たちが遺産分割協議をして分割方法を決定しなければなりません。
親がいなくなった後、子供たちだけで財産の取り分を決めていくのです。誰でも価値の大きい財産を欲しがるのは当然かと思いますので、話し合いがまとまらないことも多くなるかもしれません。
しかし遺言がある場合には遺産分割協議の必要がないため、スムーズに事が運ぶ可能性が高まります。
また遺言は、親が子へ残してあげられる最後のメッセージです。遺産分割方法を指示するだけでなく、それぞれの子供たちへの思いや考えを残してあげることができるのです。子供たちが、親の思いや考えを改めて知ることにより色々なことに納得しやすくなると思います。
ここで留意しなければならないことは法定相続人の「遺留分」についてです。→参照Nマガジン「相続対策としての生命保険③」https://n-concord.com/magazine/post-78/
遺言は被相続人(例えば親)が遺産分割の方法を自由に決めることができますが、「遺留分」という権利は遺言の効力を上回ります。
例えば、遺言で「全ての財産を長男に渡す」としたとします。遺言の効力自体が無くなるわけではないので誰も文句を言わなければ、遺言通りに遺産相続できます。しかし兄弟など他の相続人が「遺留分」をくださいと主張すると、その通りにしなければなりません。これを「遺留分侵害額請求」といいます。また以前は遺留分の支払いとして不動産の持分も可能でしたが、今は金銭での支払いのみとなっています。仮に不動産の持分で支払ったとしますと「代物弁済」となり、支払った側には譲渡所得税が、受け取った側には登録免許税・不動産取得税がかかってきますので注意が必要です。
遺言で遺産分割を決めていく際に、この「遺留分」は必ず考慮して作成しなければならないことを念頭においてください。「遺留分」を考慮しない遺言は、かえって遺産分割トラブル発生の種になってしまうかもしれません。
親が子供たちのことを考えて遺産の分け方を決めてあげる。なぜそういう分割にしたのかを伝えてあげる。子供たちにどんな思いで子育てしてきたかを伝えてあげる。今後も兄弟仲良く暮らしていってほしいという親の願いを残してあげる。遺留分のケアも考えてあげる。こんな遺言であれば、遺産分割トラブルを防止する最強のツールになると筆者は考えます。
最近、遺言自動作成システムを開発したという記事を目にしました。
不動産や預貯金の目録や相続割合などを入力していくと自動で遺言が作成されるそうです。
便利かもしれませんが、数字を入力して自動に作成される遺言に「親の思いや考え」を織り交ぜていくことは難しいように思えます。
相続対策を考えることは、分割する財産価値や税金など数字に関することも非常に大事ですが、親子の愛情や感情を改めて思い返し、これを最後に伝えてあげられる大切な機会となります。
税金計算などは数字を入力して自動計算が便利だと思いますが、遺言はもっと人間味があるものにしたいと筆者は考えてます。
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