遺産分割で,もめたくない時の一手
2019.02.11
お会いした方々に相続の対策をしているかどうかをお伺いすると、多くの方々から「うちは相続税を払うほどの財産が無いので関係ありませんよ」といった意味のお答えをいただきます。
確かに相続税という視点から見ますと、相続税を支払う人の割合は全体の8.1%(2016年)ですので一部の方の問題ということになります。ちなみにこの相続税を納税する人の割合ですが、相続税の基礎控除が縮小される前は4.4%(2014年)でした。
では相続税の支払いが生じない方は、相続の対策をしなくていいのでしょうか?
私の答えは「ノー」です。
なぜでしょうか?
それは遺産を分けなければいけないからです。
もちろん法定相続人が一人という場合には分けなくていいので考える必要は無いかもしれません。
しかし多くのケースでは、法定相続人が2人以上いるはずです。
相続財産が全て現金であれば、平等に分けることは簡単です。
しかし、このようなケースはまれで、大体は不動産等の現金ではない相続財産が含まれています。不動産は切ったりできませんので平等に分けることが難しくなってきます。不動産を共有するという方法も取れますが、のちに禍根を残す可能性が高くあまりお薦めできません。
そこで生前にしっかりと遺産分割の対策をしておく必要性が高まります。方法は別の章に記載しておりますので、ここでは割愛させていただきます。(「相続対策としての生命保険④」参照)
さて生前に対策を講じることが出来ればいいのですが、対策を講じる前に相続が起きてしまったらどうしたらいいのでしょうか?
相続が起きてしまったら、もう対策を講じることはほぼ不可能ですので、
あとは法定相続人同士がケンカしないで遺産分けをし、相続税が生じるのであればしっかりと納税をしていただくだけです。
ここで遺言が無い場合は法定相続人同士で遺産分割協議をして分け方を決め、遺産分割協議書を作成して分けるのですが、すんなりと話し合いを進められればいいのです。
しかし、法定相続人の誰かから「兄貴は教育費をかけてもらった上に、一番価値の高い自宅までもらうのかよ」などの言葉が発せられると、話しがこじれにこじれることも少なくありません。
こうしたことが起きることを予測して面倒を避けるために、相続放棄を選択する方もいらっしゃいます。この相続放棄は死亡したことを知った日から3か月以内にしなければなりませんが、放棄後は相続に全く関わらくてよいことになります。
もう一つ遺産分割協議から解放させる方法として、「相続分譲渡」という方法があります。
この方法は読んで字のごとく、法定相続分を譲渡することです。
他の相続人に譲渡してもいいですし、相続人以外の人に譲渡することもできます。
他の相続人への譲渡ならば無償ですることもできます。
譲渡先の人が譲渡を受けてくれる必要がありますが、相続放棄と違って自分の相続分が誰にいくかを決めることができます。(相続分の取戻しという制度もあるので注意が必要です)
ただしこの方法は相続人としての身分が解消されるわけではないので、被相続人の借金の債権者から返還請求をされたら応じなければなりません。
よって、相続財産に借金があり相続したくないという場合は迷わず相続放棄を選択するべきでしょう。
次回はこの相続分譲渡の手続き方法や注意点について記載してまいります。