法人の節税保険について
2019.03.03
2019年2月13日に国税庁から各生命保険会社に対して、「法人向け定期保険等の税務取扱について見直しを検討している」旨の連絡が入りました。
各生命保険会社はこれを受けて、大部分の法人向け生命保険を一時販売停止としてます。
どのような商品が見直しの対象となっているのでしょうか。
国税庁は、「契約者が法人で、契約期間が3年以上の定期保険と第3分野のうち解約返戻率が最大で50%を超えるもの」としています。
上記商品に対しての通達が出される時期と内容は今のところ明らかになっておりませんが、通達内容の焦点は以下のことかと筆者は考えます。
①損金算入割合がどう変わるのか。
②いつの契約から経理処理変更となるのか。
③いつの会計からか。
といったところでしょうか。
①は今まで保険料全額が損金算入だったものが半分が損金算入となったり、半分が損金算入だったものが3分の1損金算入となったりするのでしょうか。もしくは全額資産計上(損金算入はゼロ)という可能性も否定できません。
②のいつの契約から適用となるかですが、以下の3パターン考えられるでしょう。
・通達日から
・通達日以降の指定日から
・国税庁が保険会社へ変更予告をした2019年2月13日から
・契約日に関係なく販売されている対象商品すべて
③は今後の会計年度から変更を求められるか、過去の会計年度まで翻り修正申告を求められるかとなります。
では過去に節税生命保険への経理処理変更通達は、どのようなものがあったのでしょうか。
2008年に「逓増定期保険」、2012年に「がん保険」の通達が出ておりますが、いずれも通達日以降の指定された日以降に販売された商品への経理処理変更となっております。また全額損金であったものが半分損金算入や3分の1損金算入となりましたが、全額資産計上へ変更といったものはありません。
これは法人税基本通達等で損金算入を認めていたものを変更するために、過去のものに訴求しては問題があるという解釈ができると思います。
しかし過去に、傷害保険の一種で解約返戻率が高かった商品を、保険会社側で勝手に解釈して全額損金として販売されていた事例があります。この時には国税庁は、この商品が販売開始から販売されたもの全てへの経理処理変更とした事例があります。過去の会計年度の翻って修正申告も必要となりました。
これは国税庁が何の通達を出していないものを、保険会社側で勝手に判断して経理処理を判断したために過去のものまで訴求されたと思われます。
今回の商品販売前には販売会社が税務署へ経理処理を確認しているとのことですので、過去へ訴求する可能性は低いのではないかと思いますが、なにぶん国税庁が判断を下すことですので、どういう通達が出るのかを断定することはできません。
※ 令和元年7月8日以後の契約に係る定期保険又は第三分野保険の保険料については改正後の取扱いが適用されています(解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険の保険料については、令和元年10月8日以後の契約に係るものについて、改正後の取扱いが適用されます。)(国税庁 法基通9-3-4等)