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路線価での相続税申告に対して否定判決

2019.12.22

相続税の申告をする際、土地の評価は通常「路線価」を基にして計算されます。

土地や家などの不動産は、相続財産として時価で評価すると法律で定められています。しかし、基本的には不動産の素人である納税者が不動産時価を把握することは容易ではないとして、国税庁は「路線価」を毎年発表して相続税や贈与税の算出基準としています。

今回はこの相続税算出基準である「路線価」を使って相続税申告した件に対して、「路線価」評価を否定する判決が出て波紋を呼んでいます。

何が否定されたのかと言いますと、マンションの「路線価」評価が否定されました。

具体的には、合計13億7000万円で購入した2棟のマンションを3億3000万円で相続税申告したところ、国税が不動産評価で12億7300万円が妥当としたというものです。

これに対して東京地方裁判所は、国税側の主張を認める判決を出しています。

「路線価」を使って相続財産評価をしたものを「不適切」としたもので、判決では「特別の事情がある場合には路線価以外の合理的な方法で評価することが許される」としている。

国税庁が、土地の評価は「路線価」を基に算出しなさいという指示を自ら否定した格好だが、これは行政の暴挙なのでしょうか?

上記で「不適切」とした根拠として、「財産評価基本通達6項」を適用しています。通称「総則6項」と呼ばれるもので「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という短い条文です。

実はこの通称「総則6項」を適用して、いわゆる「タワーマンション節税」が指摘を受けるのではないかということがかなり前からささやかれていました。

なぜでしょうか?

マンションは区分所有です。1戸1戸の土地代は区分所有者で割られていくために安くなっていきます。

タワーマンションの上部階は景色がいい等の付加価値が付き購入価格が大変高価になります。ゆえに同じタワーマンションの上部階と下部階の販売価格にかなりの開きが出てきます。購入価格には大きな開きが出ますが、相続財産評価となると「路線価」を基に計算するために上部階も下部階もほぼ同じ評価額になってしまいます。つまりタワーマンションの上部階は購入価格は大変高価であるにもかかわらず、相続財産としては普通のマンションと変わらない評価となるために相続税をかなり低く抑えることができるわけです。しかも売却時は高い価格で売れるのです。いいことばかりですよね!

しかしタワーマンションというのは比較的最近に建築されてきた形態です。国税庁が「財産評価基本通達」というもの作成した時には、タワーマンションなんて全く想定されていなかったわけです。

そこで、前述されました通称「総則6項」のお出ましとなります。

いくら通達通りに財産評価したと言えども、実勢価額の5分の1になるようなケースは「著しく不適当」で異常と言わざるを得ないということになるのでは?と言われていたのです。

かなり前から注意を促されていたことでしたが、今回は国税庁が「総則6項」という伝家の宝刀を抜き地裁が認める判決を出すということになりました。

今後、相続税算出のための財産評価で通達基準と、実勢取引価格に大きな差がある場合は注意が必要と言えます。

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