相続財産をどうやって分けるの?⑤~生命保険活用編~
2020.04.05
前回の「相続財産をどうやって分けるの?④~遺言内容の重要性~」では、実際の事例を使って不動産がある場合の遺産分割の難しさについてお話ししました。
不動産は分割しずらく、公平に分けることが難しいからです。
そこで今回は、遺産に不動産が含まれる場合に生命保険を使って上手く分割する方法をご紹介します。
この方法は「遺留分」という法律的権利がキーワードになりますので、最初に「遺留分」について簡単にご説明します。(Nマガジン記事内でも何度か触れていますが)
遺留分とは、法定相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた制度のことで、兄弟姉妹以外の相続人には一定割合の相続財産を取得できる権利が与えられています。
それぞれの法定相続人が取得できる遺留分の割合は「相続財産をどうやって分けるの?②~法定相続分編~」に記載してますのでご参照ください。
さて前回の事例をおさらいしてみましょう。
相続財産は5000万円の自宅と1000万円の現金・預貯金、500万円の有価証券でした。
法定相続人は長男、次男、長女の3人でした。
そして被相続人の遺言があり、遺言の内容は以下の通りでした。
長男が自宅の5000万円
次男と長女が残りの財産を750万円ずつ相続するという内容です。
ここで相続財産の5000万円と750万円という価値の差が大きすぎるとなり話がまとまらなくなってしまった訳です。
今回のケースで「遺留分」は一人約1084万円です。(法定相続分×1/2)
ということは次男と長女は750万円しか相続していませんので、あと334万円ずつ請求できてしまいます。
(今回のケースでは次男、長女とも遺留分減殺請求はしませんでしたが)
誰に請求するのかと申しますと、不動産5000万円を相続した長男です。
この請求を「遺留分侵害額請求」といい、請求された長男は334万円×2人分を現金で支払わなければなりません。
(以前は不動産の持分で支払うこともできましたが、民法改正後は現金で支払わなければならなくなりました)
長男は不動産しか相続していないため、自分自身の貯蓄から出すか、不動産を売却して現金に換えて支払ったりしなければなりません。
しかも相続税も現金で支払わなければなりません。結構大変ですよね。
さて今回は生命保険を活用するというお話しです。
被相続人に、生前以下の契約形態の生命保険に加入に加入してもらうのです。
契約者=被相続人
被保険者=被相続人
保険金受取人=長男
保険金額=700万円
保険期間=終身(相続はいつ起こるか分からないので、相続対策用の保険期間は必ず終身です)
この保険契約に加えて被相続人に遺言を作成していただきます。
この遺言の中に「長男が受け取る保険金から次男と長女に340万円ずつ代償分割交付金として渡す」旨の文言を入れます。
そして親の親の子たちへの想いを付帯事項に加えておくと、なお良いでしょう。
こうして、できるだけ揉めずに分割する対策方法がある訳です。
生命保険金は受取人固有の財産となりますので、生命保険金受取人は必ず代償分割交付金を渡す相続人にします。
他の相続人を生命保険金受取人とした場合は、受け取った保険金がその人が元々持っていた財産と同じですので別途遺留分減殺請求できてしまいます。
これを間違えてしまいますと対策どころか揉める材料を作っただけとなってしまいますのでご注意ください。
こういった有効な生前対策方法は被相続人が生きているうち、しかも能力がしっかりしている時でないと実施することができません。
(認知症が出てしまいますと諸々の契約ができなくなってしまいますし、遺言の作成も困難になります。)
できるだけ早く対策を行うことをお勧めします。
次回は別の事例を見ながら分割の対策を考えていきます。