相続対策としての生命保険③~遺産に不動産がある場合の問題点~
2018.06.11
前回の「相続対策としての生命保険②」https://n-concord.com/magazine/post-61/では生命保険契約で契約者・被保険者・死亡保険金受取人を誰にするかで、保険金を受け取った際の税金のかかり方に違いがあるという話をしました。
今回は、死亡保険金は遺産分割対象外であるという解釈を利用した相続対策についてお話をしていきます。
死亡保険金は、被保険者が生存しているうちから保険金受取人が指定されているために保険金受取人が元々保有していた固有の財産であると民法で解されており、相続財産ではなく遺産分割をしなくていい財産とされています。(ただし、「みなし相続財産」として相続税の課税対象です)
この死亡保険金の性質を利用した遺産分割対策を考えていきます。
以下の例を見てみましょう。(極端な例で申し訳ないですが、分かりやすく状況設定しています)
被相続人=親
相続人=長男A・次男B・長女C
相続財産=不動産(家・土地)1億円、現金2,000万円
被相続人である親が大往生し、相続財産を子供3人で以下のように分割したとします。
不動産を分割することは困難なため、
不動産の1億円は長男Aが相続し、残った現金を次男Bと長女Cで1,000万円ずつ(2,000万円の半分ずつ)相続したとします。
この分割方法で大丈夫でしょうか?
誰も文句を言わなければ、この分割の仕方でも問題ありません。
でもよく見てください。貰った遺産の価値は長男A一人が1億円で、残る2人は1,000万円ずつです。
遺産価値としては10倍の差があります。これでも兄弟仲が良く誰も文句を言わなければ問題ありません。
ここで「遺留分」という相続人の権利を考えてみましょう。「遺留分」とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。この「遺留分」は遺言でも侵害することはできません。相続人が子である場合は、法定相続分の1/2が遺留分となります。
今回のケースに当てはめますと相続人が子3人なので法定相続分がそれぞれ3分の1ずつ。遺留分はその半分になりますので6分の1となります。遺産総額1億2,000万円の6分の1ですので、2,000万円が遺留分の金額となります。
遺留分が2,000万円ですが、次男Bと長女Cは1,000万円しか相続していませんので、あと1,000万円くださいと長男Aに請求できる訳です。これを遺留分侵害額請求といいます。この遺留分侵害額請求を起こされると長男Aは請求を起こした兄弟に現金を支払わなければなりません。
しかし長男Aは不動産しか相続していませんので、相続財産からは遺留分である現金1,000万円は支払えません。どうするのでしょうか?
自分の貯金から?借金?自宅の切り売り?
何か大変そうですね。
少し長くなりましたので、次回この遺産分割問題の対策方法を一つご紹介します。→https://n-concord.com/magazine/post-91/