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生命保険の契約者変更をするとどうなるの?(個人編)

2020.05.18

親が子のために生命保険契約をしてあげる。

結構、見かけることの多い契約です。

では、親が子の生命保険に加入するとき、契約者は誰になっているでしょうか。

 

生命保険契約には、3つの立場の人が登場します。

①契約者

②被保険者

③保険金受取人

 

皆さんが、結婚した時や社会人になった時に加入する生命保険はどうしているでしょうか。

通常、

①契約者=自分

②被保険者=自分

③保険金受取人=配偶者や親etc

となっているのではないでしょうか。

この契約形態は、受け取った生命保険金が相続税対象となる型です。(この型は500万円×法定相続人数の保険金非課税となります)

 

では親が子供のために、子供の生命保険に加入してあげる場合はどうでしょうか。

子供の保険に加入してあげるということは、「②被保険者が子供の契約をしてあげる」といことになります。

被保険者が子供の契約は、2パターン考えられます。

 

1パターン目

①契約者=子

②被保険者=子

③保険金受取人=親

 

2パターン目

①契約者=親

②被保険者=子

③保険金受取人=親

 

子供は保険料の支払い能力がありませんので、2つのパターン両方とも保険料は親が支払うことになります。

 

 

生命保険契約の契約者変更

 

最初に、保険料を支払っていた親が亡くなってしまったケースを考えてみましょう。

両パターンとも、被保険者である子は生存しているために契約は継続することになります。

この契約は子が引き継ぐということになり、親の死亡時の解約返戻金相当額で遺産を相続することになります。もちろん相続税の課税対象となります。

保険会社とは以下の手続きを行います。

1パターン目は、契約者が子ですので③保険金受取人の変更と引落口座等の設定をするだけです。

2パターン目は、契約者が親ですので、①契約者を被保険者である子への変更と、③保険金受取人の変更と引落口座の設定が必要となります。

ここで注意しなければいけないのは、2パターン目の契約引継ぎです。このパターンは遺産分割の対象財産となりますので、他の相続人から解約して分割してほしいといった要求がくる可能性があります。パターン1は、元々契約者が子ですので、分割対象とはなりません。

 

次に、子が社会人になったり結婚した際に保険料の支払いを子に変更するケースです。

パターン1は、契約者と引落口座の変更が必要です。

パターン2は、引落口座の変更だけです。

なお、両パターンとも保険金受取人を親から配偶者や子に変更することもあります。

こうして、保険料の支払者を変更した際に贈与税等の課税が生じるのかどうかですが、変更時には何の課税も生じません。

国税庁の見解を以下に掲載しておきます。

(参考)

【照会要旨】

生命保険契約について、契約者変更があった場合には、生命保険契約に関する権利の贈与があったものとして、その権利の価額に相当する金額について新しく契約者となったものに対し、贈与税の課税が行われることになりますか。

【回答要旨】

相続税法は、保険事故が発生した場合において、保険金受取人が保険料を負担していないときは、保険料の負担者から保険金等を相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなす旨規定しており、保険料を負担していない保険契約者の地位は相続税等の課税上は特に財産的に意義のあるものとは考えておらず、契約者が保険料を負担している場合であっても契約者が死亡しない限り課税関係は生じないものとしています。

したがって、契約者の変更があってもその変更に対して贈与税が課せられることはありません。ただし、その契約者たる地位に基づいて保険契約を解約し、解約返戻金を取得した場合には、保険契約者はその解約返戻金相当額を保険料負担者から贈与により取得したものとみなされて贈与税が課税されます。

(国税庁:相法第5条2項、相基通3-36)

 

つまり、生命保険契約の契約者変更等をした際には課税は生じず、死亡保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取った際に課税が生じることになるのです。

 

 

課税の種類

 

どのように課税が生じるのかを見ていきましょう。

この課税を考える時に重要なのは、誰が保険料を支払って、誰がお金を受取ったか、ということです。

契約者が親であろうが子であろうが関係なく、誰が保険料を支払っていたかということなのです。

例えば、

契約者=親

保険料負担者=親

被保険者=子

保険金受取人=親

の契約で、契約者と保険料負担者を子へ変更します。

変更後、すぐに子が契約を解約して解約返戻金を受け取ったとします。

この場合は、受け取った解約返戻金の全額が贈与税課税の対象となります。

 

では同ケースで、契約者と保険料負担者の変更後すぐにではなく、変更後に子も保険料を負担してから解約したらどうなるのでしょうか?

これは、保険料の負担割合で課税の種類が分かれます。

この保険契約の保険料負担全額に対して、親の負担分が8割、子の負担分が2割だったとしますと、受け取った解約返戻金の8割は贈与税課税、2割は所得税課税といった具合です。

 

死亡保険金や満期保険金も同様の考えになります。

例えば、上記同ケースで、死亡保険金受取人を配偶者に変更していたとします。

そして保険料負担割合が、親8割、子2割の状況で配偶者が死亡保険金を受け取ったとします。この場合の課税は、受け取った保険金の8割は贈与税課税、2割は相続税課税となります。

 

被保険者=子、保険料負担者=親の生命保険契約で、お金を受取る人が親以外になった時には贈与税課税になる訳です。

 

 

贈与税課税を逃さない法改正

 

贈与税は課税額が高くなる傾向が強く、税負担が大きくなるのですが、実は、以前は税務当局が生命保険契約の契約者変更を把握できていませんでした。

死亡保険金等を受取った際にはその時点での契約者しか分かりませんでしたので、納税者側からの申告がないと契約者変更等があったかどうかが分からないために、本来は贈与税課税のものが、所得税や相続税の課税で処理されていたことが多かったのです。

このことを利用した節税(脱税?)話法も横行していましたので、国税庁は契約者変更を把握するための法改正を行いました。

この改正により、平成30年1月1日以降に生命保険契約の契約者変更に対して保険会社が税務署へ支払調書を提出することが義務付けられました。このことにより、確実に贈与税課税されることになったわけです。

 

支払調書の記載すべき事項は次の通りです。

①変更後の契約者の氏名・住所等

②変更前の契約者の氏名・住所等

③変更前の契約者が死亡した日

④変更の効力が生じた日

⑤上記③または④いずれかの日における解約返戻金相当額

⑥保険料の総額および上記②の契約者が払い込んだ保険料の金額

⑦その他参考となるべき事項

 

また、保険金支払時の支払調書も記載事項が追加されています。

「追加部分」

契約締結後に契約者変更が行われた場合

イ:契約者変更(変更が2回以上あった場合は最後の契約者変更)

  前の契約者の住所・氏名

ロ:現契約者が払い込んだ保険料の額

ハ:契約者変更が行われた回数

 

これで、生命保険契約の契約者変更は完全に補足できることになりました。

 

 

医療保険の契約者変更等

 

最後に、医療保険の契約者変更について見ていきます。

親が子のために、医療保険に加入してあげることもよくあります。

医療保険も

①契約者②被保険者の立場の人がいますが、③保険金受取人ではなく給付金受取人となります。

入院、手術や確定診断された時の給付金は、契約者が誰であろうと被保険者が給付金受取人となります。

そして、この給付金は非課税です。

ということは、親が保険料負担者となって子の医療保険に加入していたとしても給付金を受け取るのは子ですが、非課税です。(死亡給付金が付加されている商品もあり、死亡給付金受取人は親です)

また、現状の医療保険は一部を除いて、ほとんどがカケステ型です。

よって給付されるのが、子が生存している間の医療関係給付金だけで、解約返戻金もない商品であれば、将来に保険契約者と保険料負担者を子へ変更したとしても、贈与税の課税が生じることはないと言えます。解約返戻金が数万円程度ある商品でも暦年贈与の非課税枠110万円以内となります。

なお、解約返戻金がそれなりに貯まる商品や、死亡保険金がそれなりに付いている商品もあり、この場合は課税が生じてきますので、契約内容をよく確認する必要があるでしょう。

保険の契約内容を知りたい等のことがございましたら、お気軽にご相談ください。

 

また、実際の税務については所轄の税務署や専門の税理士に確認等をしていくことも必要です。

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