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遺産の不動産価値はどうやって決めるの?~不動産評価~

2020.05.21

平成29年に中に亡くなられた方は約134万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約11万2000人で、課税割合は8.3%でした。

相続税額の合計は2兆185億円で、被相続人1人当たりでは1807万円となっています。

また、相続財産の金額構成比は、土地が36.5%、現金・預貯金等が31.7%、有価証券が15.2%となっており、不動産の割合が一番大きくなっています。

(国税庁:平成29年分)

 

現金等は金額いくらであるのか分かりやすいですが、不動産の金額はどうやって計算するのでしょうか?

今回は不動産の評価の方法について見てみましょう。

 

 

3つの不動産評価方法

 

最初に、不動産会社等が、不動産の売買等で使う評価方法をご紹介します。 

 

1)取引事例比較法

 近隣で似たような条件の物件が、どの程度の金額で売買されたのか、実際の成約事例を探し出して相場を算定していきます。

 以下の計算式を用います。

 「事例物件の平米単価×(査定物件の評価ポイント÷事例物件の評価ポイント)×査定物件の面積×流動比率

 ・事例物件の平米単価:近隣で査定物件と似たような条件を持つ成約物件(事例物件)を洗い出し、平米単価を割り出したもの

 ・査定結果のポイント÷事例物件のポイント:事例物件に対して査定物件がどれだけ総合評価で上回っているか、下回っているかを割り出したもの

 ・査定物件の面積:建物の面積です。

 ・流通性比率:売りやすいか売りにくいかの数値化で、「1.0」を標準値として0.93~1.07の範囲で用いる。

         数値が大きいほど売りやすく、小さくなるほど売りにくい物件となる。

 

2)原価法 

 対象不動産を、現時点で改めて建築した場合にいくらになるかを割り出し、築年数に応じてどの程度まで価値が下がるかを計算し、現在価値を求める方法です。  

 

3)収益還元法

この方法は賃貸マンションやアパート等の投資用物件の価値を算定する方法で、その物件が将ら鵜生み出すと期待される収益から現在価格を算定します。

収益還元法は、1年間の収益を利回りで割る「直接還元法」と、一定の投資期間から得られる収益と一定期間後の物件価格を予測して合計する「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」の2つが主にあります。

居住用の不動産は、この方法では評価しません。

 

 

土地の評価

 

次に土地の評価を見ていきましょう。

土地は「一物五価」と言われ、①実勢価格(時価)、②公示地価・基準地価、③相続税評価額、④固定資産税評価額、⑤鑑定評価額があります。

この土地の評価も不動産売買の相場を算定に影響を与えます。

 

①実勢価格(時価)

実際の売買契約が成立した価格で、国土交通省が公表している「土地総合情報システム」などで実際に行われた不動産の取引価格を知ることができます。

 

②公示地価・基準地価

国または都道府県が、年に一回公表している土地の価格で、資産評価システム研究センターの検索システム「全国地価マップ」で検索することができます。

公示地価は実勢価格の90%が目安とされています。

 

③相続税評価額

路線価方式と倍率方式があります。

路線価方式は、その道路に面する土地1㎡当たりの評価額です。

倍率方式は、路線価の定められていない地域の土地の評価方法です。

どちらとも国税庁のホームページで確認することができます。

 

④固定資産税評価額

毎年5~6月頃に固定資産税の納税通知書が所有者に届きます。固定資産税評価額はこの納税通知書に記載されています。

納税通知書がお手元にない場合は、不動産の所在市区町村(23区は都税事務所)の税務課で固定資産の評価証明を発行してもらえます。

この評価額は不動産の登記申請時にも使い、売買の登記は固定資産税評価額の2%、相続の登記は0.4%が登録免許税としてかかります。

 

⑤鑑定評価額

不動産鑑定士に厳密に計算してもらいます。

不動産鑑定士に依頼しますと、最低でも数十万円といった高額の費用が掛かることが多いので、よほどトラブルが想定されるケース等で依頼することになるでしょう。

 

 

相続時の不動産評価

 

では、今回の表題であります、遺産の中にある不動産をどう評価していけばいいのでしょうか。

実は、相続が発生して不動産の価値を計算する場合、土地については、いくつかの評価方法がありますが、法律では、この方法で計算しなければならないということは定めれていません。

ちなみに相続税を計算するための土地評価では、大半が上記③相続税評価額が使われています。

 

では、③相続税評価額をクローズアップして見ていきましょう。

相続税評価額には路線価方式と倍率方式があることは先述しました。

最初に路線価方式からお話しします。

 

路線価

路線(不特定多数が通行する道路)に面する土地の、1㎡当たりの評価額のことで、例年7月1日に国税庁によって公表されています。

路線価方式の地域における土地の相続税評価額は、

「路線価×各種補正率×土地面積」 で計算します。

(各種補正率とは、奥行価格補正率や側方路線影響加算率などがあり、国税庁によって調整率として定められています)

例えば、路線価が30万円、各種補正率が1.0、土地面積が200㎡としますと、30万円×1.0×200㎡=6000万円 となり、この金額が相続税評価額になります。

 

倍率方式

路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。路線価図に「倍率地域」と掲載されている地域は倍率方式で土地の相続税評価額を計算します。

倍率方式の土地の相続税評価額は、

「固定資産税評価額×倍率」 で計算します。

倍率は、国税庁ホームページに掲載されている評価倍率表で確認数することができます。

例えば、固定資産税評価額が3000万円で、倍率が1.1である土地の相続税評価額は、3000万円×1.1=3300万円 となり、この金額が相続税評価額になります。

 

ちなみに、「路線価地域」でも行き止まり私道には路線価が設定されていません。このような土地を評価する場合は、税務署に路線価を設定してもらうことが可能です。税務小児設定してもらった路線価を「特定路線価」といいます。しかし、路線価を使わずに私道に面した土地の評価をする事も可能です。そして、「特定路線価」を使わずに、路線価で評価したほうが土地の評価が下がり、相続税が安くなることがあります。どう評価するかは専門家と相談して決めるのが得策でしょう。

 

 

次に、土地を所有しているけど、他人に貸している等の場合は、どう評価するのかを見ていきましょう。

所有している土地を第三者に貸し、第三者がその土地に家や事務所を建てている場合、その土地を「貸宅地」といいます。

所有している土地に自分でアパートやマンション等の賃貸物件を建て、人に貸している場合は、その土地を「貸家建付地」といいます。

両者の違いは、所有土地上の、建物の所有者が自分かそうでないかの違いになります。

この違いによって、相続税評価額の算定方法が異なりますので、それぞれの算定方法を見ていきましょう。

 

 

貸宅地

最初に、上記の路線価方式もしくは倍率方式を使って自用地評価額を算出します。

その後、以下の公式を使って計算します。

「自用地評価額×(1ー借地権割合)=貸宅地の相続税評価額」

借地権とは、土地を借りている人が土地を利用する権利のことです。そして貸している土地の所有者は、その土地を受有に処分することができません。そのため、その土地を自分で使用する場合よりも安く評価することができます。

借地権割合は、地域によって異なり、国税庁ホームページに掲載されている路線価図で確認することができます。ちなみに、アルファベットで表示されています。

例えば、路線価が30万円、各種補正率1・0、土地面積200㎡、借地権割合70%の「貸宅地」だったとします。

計算しますと、30万円×1.0×200㎡×(1-0.7)=1800万円 となります。

ただ単に自分所有の土地として相続税評価額を計算すると、30万円×1.0×200㎡=6000万円 となりますので評価額が大分減ることがお分かりになると思います。

 

 

貸家建付地

こちらも最初に、路線価方式もしくは倍率方式で自用地評価額を算出します。

次に以下の公式を用い計算します。

「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額

借家権割合とは、建物を借りている人が建物を利用する権利で、全国一律30%と定められています。

賃貸割合とは、貸し出されている部屋の床面積割合で、貸し出されている床面積÷全部屋の合計床面積 で算出します。

例えば、自用地評価額が5000万円、借地権割合が70%、借家権割合30%(全国一律)×賃貸割合100%の「貸家建付地」だとします。

計算しますと、5000万円×(1-0・7×0.3×1.0)=3950万円 となります。

「貸家建付地」も自用地評価額5000万円と比較して、評価が下がっていることがお分かりになると思います。

 

「貸家建付地」の評価を下げるポイントに、賃貸割合があります。

賃貸割合の数値が高いほど評価を下げることができますが、空室が多くなると賃貸率が下がってしまいます。

例えば、上記計算では空室無しの賃貸率100%で行いましたが、半分空室で賃貸率50%だと以下のようになります。

5000万円×(1-0.7×0.3×0.5)=4475万円  です。

空室がない場合は、3950万円の評価でしたので、同じ物件でも空室が増えることにより評価額が大分変ってくるのです。

 

相続発生時に空室であっても、空室が一時的なものであれば空室とみなさないという判断基準規定もあります。

判断基準は以下の通りです。

・各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されていたものかどうか

・賃貸人の退去後、速やかに新たな賃貸人の募集がおこなわれたかどうか

・空室の期間、他の用途に供されていないかどうか

・空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか

・課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか

 

以上ですが、規定にありがちな、あいまいな表現となっていますので、解釈の相違によるトラブルも少なくありません。

一番多いのは、どれくらいの期間空室だったら規定外なのかということです。

1か月以上空室があっても、他の要件を満たしていることで一時的な空室と認められることもあるようです。

また、ご参考に以下の判例もあります。

「平成29年5月11日大阪高裁判決、5カ月以上の空室は一時的な空室ではないとみなす」

ということです。

判例社会の日本において、一つのベンチマークになると思いますが、ケースバイケースの対応になると思いますので専門家のアドバイスを受けることが肝要です。

 

 

この他、相続時の土地の評価に関しては、「地籍規模の大きな宅地の評価」などもあり規定等は多岐にわたります。

資産税に強い税理士の先生たちとタッグを組み相続対策を行うことで、結果が大きく変わってきます。

エヌ・コンコード・コンサルティング株式会社は、そのタッグ形成のお手伝いをしてまいります。

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