不動産の相続と家族信託考察②
2018.08.02
前回家族信託が使えるケースについて記述してまいりました。前回はこちら→https://n-concord.com/magazine/post-211/
今回はその家族信託について、もう少し具体的にお話していきます。
最初に状況を整理しておきます。
登場人物
母A、長男B(配偶者あり・子なし)、長女C(独身)、長男の配偶者。
相続財産
自宅(土地・建物)、現預金
〇最初の相続
被相続人=母A
相続人=長男B(相続財産:自宅と現預金の一部)、長女C(相続財産:現預金の一部)
〇次の想定される相続
被相続人=長男B
相続人=長男の配偶者(相続財産:自宅と現預金の一部)長女C(相続財産:現預金の一部)
〇次の長男の配偶者の相続
被相続人=長男の配偶者
相続人=長男の配偶者の親と兄弟(相続財産:旦那様一族所有であった自宅、現預金)
この流れで行きますと、母A・長男B・長女C一族が所有していた不動産(自宅)が姻族である長男Bの配偶者一族に所有権が移ってしまいます。
家族信託を組む
上記の流れを変える方法として、遺言と家族信託が考えられます。
家族信託とは何でしょうか?
その前に信託契約って何でしょうか?
信託契約には3つの立場の者が必要です。
①委託者②受託者③受益者 です。契約自体は①委託者と②受託者の2者で結べます。
①委託者は財産を委託する者
②受託者は委託された財産を管理する者
③受益者は、②受託者が管理してくれている財産の利益を被ることができる者です。
また、②の委託者を事業者が担いますと商事信託となり、その事業者は免許が必要となります。
そして家族等が受託者となる信託契約を家族信託といいます。
今回のケースで考えますと、
①委託者=母A
②受託者=長男Bもしくは長女C
③受益者=母A
の契約形態で信託契約を締結します。
これは自宅等の財産を所有している母Aが、その財産を受託者(長男Bか長女C)に管理を任せることになります。受益者は母Aですので、受託者が管理している自宅等から利益を得ることができますので住み続けることができます。
そして母Aが亡くなった後の受益者をあらかじめ決めておくことができます。これを受益者連続信託といいます。最初の受益者は母A、その次は長男B、その次は長男の配偶者、最後に長女Cと受益者を連続して決めておくのです。この際長男Bが亡くなった後の受託者も決めておく必要があります。また親族で一般社団法人を設立して、この一般社団法人を最初から受託者にしておく方法もあります。
この仕組みを使うことによって、上記に記した問題(姻族に不動産所有権が移ってしまう問題)を解決することができます。
ただし受託者にはしっかりと信託財産を管理する義務が発生します。
例えば、自宅の水道光熱費や固定資産税の支払いなども行わなければなりません。
そこで現預金も信託して信託口座に入れておく。そして上記のようなコストは信託口座から引き落としておくなどの内容を契約の中に盛り込んでおく必要があるかもしれません。
家族信託契約も個々の諸事情により、内容を熟考して作成する必要があります。
エヌ・コンコード・コンサルティング株式会社はその熟考のお手伝いを致します。