相続対策と認知症
2018.09.18
高齢化が進み認知症患者さんが保有している金融資産が増え続けているのだそうです。
上記は2018年8月26日付日本経済新聞の記事内容ですが、認知症になってしまった人が所有している金融資産は、その人が亡くなるまで手を付けられなくなってしまう可能性があります。何か手を打っていかなければ、認知症患者さんの増加が眠ったままの金融資産の増加につながり日本経済にも大きく影響していきそうです。
そして相続対策を実施するにあたり、認知症の発症は厚い壁となってたちはだかります。
記事の中の文章で「認知症になると資産活用の意思表示が難しくなり、お金が社会に回りにくくなる。」とあります。これは認知症等のように意思表示が困難になってしまった方々の財産を守るため、契約等の行為を簡単にさせないための法律があるからです。このセーフティネットが無ければ、意思表示が困難になってしまった人の所有する不動産を安価で売却されたり、何だかわからないうちに現金を贈与させられるといったような事態が生じかねません。
そこで、認知症患者さんのような契約等をする行為能力を失ってしまった人の財産を動かせるようにするために「成年後見制度」や「家族信託」などの制度が創設されています。
「成年後見制度」は、成年後見人が行為能力を失った人の代わりに契約行為することができます。しかし成年後見人に求められていることは財産の保全であり、処分ではありません。例えば、このままだと被相続人の自宅が将来は空き家になってしまうため売却しようとします。その際に成年後見人が居住用不動産の売却をするときは家庭裁判所の許可が必要となります。この家庭裁判所の許可は、処分行為に対しては、特段の理由がない限りなかなか下りていないようです。つまり成年後見制度では相続対策を実施していくことが困難になる状況が想定されます。
一方「家族信託」では、契約内の受託者に処分等の内容を盛り込んでいけば可能となってきます。(家族信託については、Nマガジン「不動産の相続と家族信託考察」https://n-concord.com/magazine/post-211/)
しかし信託契約は契約内容を今後起こりうる色々な状況を想定して作り込んでいかなければならず、気軽に作成できるものではないと筆者は考えています。「家族信託」を選択しようとする際は慎重に検討する必要があるでしょう。
以上は認知症等になり意思表示が困難になってしまった後の制度について記してきましたが、この状況で相続対策を実施していくことには大きな困難が待ち構えています。
相続対策は、被相続人が元気でしっかりしているうちに行っていくことが最善であります。子供の教育が一段落したとか、仕事を退職したなどのタイミングで一度相続対策を考えてみてはいかがでしょうか?
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