中小企業の事業承継と新事業承継税制を考える②
2018.08.23
前回「中小企業の事業承継と新事業税制を考える」https://n-concord.com/magazine/post-275/
では、事業承継税制のあらましについて記述しました。
その際に平成30年からスタートしました「新事業承継税制」は従来の制度より大分使いやすくなっているというお話をしました。
今回はもう少し制度の詳細をお話します。
先ず詳細についてですが従来制度(平成21年~)と新制度(平成30年~)を比較しながら述べてまいります。
・発行済議決権株式総数の2/3
(新制度)→全ての議決権株式が対象
・自社株課税価格の80%(相続税)・100%(贈与税)
(新制度)→自社株課税価格の100%が納税猶予
・5年間の常時使用従業員数を80%確保
(新制度)→5年間の雇用80%を維持できなかった場合の救済措置を設定
・先代経営者:会社の代表者であったこと、同族関係者で株式保有割合が50%以上でかつ筆頭株主で
あったこと
後継者:代表者である1名のみ
(新制度)→先代経営者:改正前と同じ。先代経営者以外のすべての個人株主に対象拡大
後継者:条件を満たせば最大3名まで代表権を有する複数の後継者を対象とする
・相続時精算課税制度の猶予打ち切り時時でも制度の適用が認められる
(新制度)→相続時精算課税制度利用について、60歳以上の経営者から20歳以上の推定相続人
以外の後継者への贈与も対象となる
・民事再生計画の認可決定等があった場合、当初の当初の納税猶予額を下回った差額は免除
(新制度)→経営環境の悪化時に、当初の納税猶予額と悪化時の株価で計算した納税額の差額
を免除できる
上記のように納税猶予される株式が100%になりました。
以前は発行済議決権株式総数の2/3までで、課税価格の80%までが納税猶予の対象でしたので、つまり株式総数にかかる課税価格の約53%が猶予対象でした。
これが今回の改正で100%まで引き上げられましたので、経済的効果は非常に大きくなっています。
また納税猶予を受けた後5年間は常時80%以上の雇用確保が求められており、この要件を満たせなくなると猶予されていた税金を全て納めなければいけませんでした。
これも今回の改正で常時80%が平均80%となりました。また平均80%を下回った場合の救済措置も設けられました。救済措置を受けるためには「実績報告書」の提出によりその理由を都道府県知事に報告しその確認を受けることとなっています。報告書の中で理由選択があり、選択項目は以下の通りです。
・高齢化が進み後を引き継ぐものを確保できなかった。
・採用活動を行ったが、人手不足から採用に至らなかった。
・設備投資等、生産性が向上したため人手不足となった。
・経営状況の悪化により、雇用を継続できなくなった。
・その他(具体的に理由を記載)
理由選択の他必要記載事項を記入し所定の手続きを行っていきます。
無条件に救済されるわけではありませんが、従来の制度よりは大分使い安い制度となっています。
次回はこの制度と生命保険を使った事業承継についてお話します。
続く→「中小企業の事業承継と新事業承継税制を考える③」 https://n-concord.com/magazine/post-304/